笑えるアート大賞2023
-受賞作品-

【笑えるアート大賞】

「レンチン・シアター」 森田 直樹

レンチン・シアター

審査員コメント

電子レンジ、どのくらいの普及率なのだろう?一人暮らしの人の家にも、レンジはだいたいある気がする。
調理のとき、ひとはついついレンジの窓から調理中の食品を眺めてしまう。窓から見る食品は、ホカホカするものの、通常はそこまで大きく変化はしない。当たり前ですよね。けど森田直樹さん作品の電子レンジは魔法のレンジなので、その中の食品はダイナミックに変化するのだ。「え?どういうこと?」という感覚含め、お客様にはその変化を楽しんでほしいです。(八谷和彦)

いやー、電子レンジでここまで遊べるとは!特にアニメの先祖のゾートロープみたいのビックリしました。カワイイ思いつきがコンパクトにシンプルに作品に昇華してて感心しました!これからの可能性も楽しみですね。電子レンジにこだわるのか?アニメーションにこだわるのか?個人的には街のいろんな場所、走る電車の窓とか並ぶ電柱とかにアニメーション発見していくなんてのもおもしろいような気がします。街に生息する野生のアニメーション発見の旅とか楽しそう。期待してます。(しりあがり寿)

「笑い」というものは、非常に文化的背景の色濃い感情体験と考えます。これまで培われてきた価値観や置かれた環境下でどのような笑いが育まれたかは、恐らく百人百通り。つまりあまりにも日常となった「笑いを共有する」という技術は、本来とても高度なことでありましょう。
この題目下にて本作はとても優秀で、個々人それぞれに於いて絶妙な良い距離感の共感を図っています。電子レンジを見つめるという空虚なあの「間」をこう料理してくれたのだから、それはもういくらでも鑑賞者側で二次創作ができてしまいます。オートで共犯者にされた気分です。そうして笑いは静かに伝染し、冷めた日本をほっこり温めてくれることでしょう。(服部しほり)

【入賞】

「BiGライターmini」 くどう ゆうだい

BiGライターmini

審査員コメント

普通の人には、常識というものがありまして。ものにも「常識的な機能やサイズ」みたいなものがあって、わたしたちの社会はそれを前提として回っています。けど、その常識をたまに打ち破ってくる人やものがあって、それを見たとき、私達はあっけにとられて、びっくりしたり、つい笑ってしまったりします。
街中にたまに落ちているライターが、人間社会に逆襲に来たみたいで、くどうゆうだいさんのこの作品、僕は大好きです。(作品名含めて)
(八谷和彦)

「タイトルなんてラララ」 佐々木 遊太

タイトルなんてラララ

審査員コメント

佐々木さんのまなざしがするどすぎる。なんていうか、表面的に笑えること、くだらないこと、とるにたらないようなことをテーマにしながら、それを成立させる構造や仕組みや、皆の反応を楽しんでる。佐々木さんは自分の掌の上で楽しんでる皆を見て自分が楽しんでる。佐々木さんはいつか遊園地を作るんじゃないかな。なんだかよく分からないけど楽しくて、でもなんか変で不思議な遊園地。それを上空から笑って眺めてる佐々木さんが見える気がする。(しりあがり寿)

「プラシーボ・メモリー」 鈴木 小麦

プラシーボ・メモリー

審査員コメント

私達の記憶は、結構あいまいで、できごとから数ヶ月や数年たったりすると、話が盛られたり、美化されたり、悲惨な方に強調されたりする。特に、思い出を人に話たりするとそれは顕著で、でも、そっちの記憶の方が本人には本当になっていったりする。鈴木小麦さんの作品はそれを逆手にとったもので、もとの話を拡大して話しあい、そしてそれを本当のこととして編集する。本当と嘘の間の話は映像の中で混然と混じり合い、本当と嘘の間の、あいまいな世界がそこにたち現れるところが面白いな、と思いました。(八谷和彦)

「田中くんと二階堂くん」 タナベ カオル

田中くんと二階堂くん

審査員コメント

坦々と流れてゆくくだらなさが実に愛おしい作品。
物語の中では、主要キャラクター2人やバスに同乗する人、裸の学友やお寿司のおじさんについても、特段の説明なくただ流されてゆきます。明朗快活にしてややかみ合わない不安定なやり取りが、より奇妙さを加点します。
次々に大挙する「なんだったんだろう今のは?」は、まさに冒頭の、バスから流し見た看板の謎と重なります。鑑賞後、まるでバスに乗車していたのは我々かと錯覚するに至る、巧みな構造の映像作品でした。
(服部しほり)